さっちゃんのまほうのて
この絵本は、今までご紹介してきた楽しい絵本とはちょっと違っていて、読んだら涙が出そうになるかもしれません。でも、きっと元気も出る絵本なのです。
幼稚園に通っているさっちゃんは、とても元気な子。もうすぐお姉ちゃんになると知って、はりきってままごとのお母さん役をやろうとしました。ところがいつもお母さん役をしているまりちゃんに、「さっちゃんはお母さんにはなれないよ。だって手のないお母さんなんてへんだもん」と言われてしまいます。
さっちゃんは、生まれつき右手の指がないのです。さっちゃんは、そう言われて初めて、自分の手のことを気にし出します。お母さんに「小学生になったら指はえてくる?」とたずねて、お母さんを泣かせてしまいます。
私もこの場面で泣けてしまって、子どもに読んでやったら、子どもも泣くだろうと勝手に思っていました。そうするとやっぱり、中3の娘は私と全く同じように涙ぐんでいました。 ところが、5才の娘は、さっちゃんが元気を取り戻していくところで「よおし、いくぞー」 と自分もいっしょになって元気になっていました。私には思いがけない反応でした。
この本は、さっちゃんのようなお子さんとその親の方たち、画家のたばたせいいちさんが5年がかりで、何度も何度も話し合ったり、合宿をしたりして作られたそうです。5才の子がちっともメソメソしないでこの本を受けとめたのを見て、時間がかかったのは、きっと、読んだ人が涙を流すだけでなく、元気になる本を作りたかったのだと、私は気がつきました。それで、安心してこの欄に仲間入りさせてもらいました。
先天性四肢障害児父母の会、のべあきこ、しざわさよこ 文 たばたせいいち 絵 偕成社 1,200円
(1999年 ’平成11年’ 1月18日 12回 杉原由美子)