百まいのきもの
とても大切なことなのに、どういう言葉で説明していいか分からない。そんな時、本はほんとうに役に立つと思います。
クラスに仲間外れになっている子がいると分かった時、親は何と言ってやればよいのでしょう。 私はこの「百まいのきもの」という本をいっしょに読もうと思います。
この本には3人の女の子が登場します。1人はいじめっ子、1人はいじめられっ子、そしてもう1人はその間に立って悩む子です。私はもう何度もこの本を読みましたが、不思議なことに、読む日によって自分がどの子の立場に立っているかが変わるのです。自分の中の意地悪な気持ちを情けなく感じたり、妙にいじけて人を避けていた子ども時代を思い出したり、クラスに溶け込めずに泣いていた転校生に何もしてあげられなかったことを悔やんでみたり・・・。
感想を聞かせてくれた子どもたちもさまざまな受け取り方をしていて、驚きました。印象深かったのは、「私はこの本を読んで、絵というものにそんな力があるのかと思って感動しました」と言った娘さんです。彼女は中学生の時、友人関係に傷ついてしばらく保健室登校していました。今は絵を描くことに夢を抱いて高校へ通っています。
教室に飾られた百枚のきものの絵。この絵本の中でもっとも美しい場面です。心を洗われる思いでいつも眺めています。
E・エスティーズ 作 石井桃子 訳 岩波書店 800円 (1999年 ’平成11年’ 8月23日 22回 杉原由美子)
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さて、前々回の(6月8日付)「からすのパンやさん」のクイズの答え。加古里子さんは、「かこさとし」という絵本作家で科学者でもあるおじさんです。