こねこのぴっち

 5匹兄弟のねこがいました。名前はみっちにぱっちにぐりぐりにぐろっぎに、ぴっちです。
 ぴっちはなぜか他の兄弟と遊ばないで、にわとりや、やぎや、あひると遊ぶのです。でも、うさぎたちといっしょにうさぎ小屋で眠ってしまったぴっちは、夜中に見たことのないけものたちに脅かされて、ひどく怖い思いをします。
 そこへ、責任感の強い犬のべろと、やさしいりぜっとおばあさんが駆け付けて助け出してくれます。助けられても、病気になって寝込んでしまったぴっち。今はやりの心因性ストレスに違いありません。さあ、どうやったらぴっちを元気にしてやれるでしょう。
 子どもに絵本を読んでやる時、たまに「お母さんの好きな本でいいよ」と言ってくれるのですが、「じゃあ、ぴっちにしたい」と言うと、「あれはだめ。こわいから」と言われてしまった時期がありました。 たった1場面の、ふくろうやきつねの出てくるところが怖いらしいのです。そこだけバックが暗い色になっているのです。
 また、つい最近、こんな感想を聞きました。「ぴっちが、みんなにお見舞いに来てもらって嬉しそうにしている場面で泣けてくるんです」お子さんに絵本を買いに来られた、若いお父さんが、ちょっとだけ恥ずかしそうに打ち明けてくださいました。
 開くと幅65㌢にもなる大型絵本なので、怖い所も嬉しい所も格別の迫力です。どのページも、「贅を尽くした」と表現したいほどの美しい絵本です。

ハンス・フィッシャー 作 石井桃子 訳 岩波書店 1,500円  (2000年 ’平成12年’ 5月29日 36回 杉原由美子)

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