チムとゆうかんなせんちょうさん
海辺の家に住んでいるチム少年は、船乗りにあこがれています。本物の船に乗って航海に出たいのですが、おとうさんもおかあさんも、「まだ早すぎるよ」と、とりあってくれません。
でも、ある日、絶好のチャンスが訪れます。仲良しのおじさんが、沖に停泊中の汽船へ連れて行ってくれたのです。「かくれていれば、ずっと乗っていられるかもしれないぞ」チムの予想は的中しました。うまく船にもぐり込んだチムでしたが、密航者には重い罰が待っていたのです。
この後、チムが船乗りとしての試練を乗り越え、なかなかの働き手に成長していくようすが描かれていきます。チムといっしょに船の中を行ったりきたりするうちに、船員たちや船長への尊敬と愛着も生まれてきます。そして、いよいよ運命の時が…。
作者のアーディゾーニは、ベトナムに生まれ、5歳でイギリスに移ったそうです。そのときの長い航海の思い出が、この絵本の下地になっているに違いありません。船と航海をよく知っている人にしか作れない、臨場感あふれる絵本です。実体験に勝るものはありませんが、やっぱり海が怖い私は、この絵本で航海の気分を味わっています。
E・アーディゾーニ 作 瀬田貞二 訳 福音館書店 1,300円 (2001年 ’平成13年’ 9月3日 53回 杉原由美子)