名馬キャリコ
うま年にちなんで、その名の通り、強くて賢いアメリカ生まれの馬のお話をご紹介します。
キャリコは、カウボーイのハンクの相棒です。赤んぼう馬だったキャリコを、狼の群れから助け出してくれたといういきさつがあって、キャリコはハンクのためなら「この世のはてにも行くつもり」です。
ハンクとキャリコが住むサボテン州は、平和そのもの、保安官もいないほどです。そこに目をつけたのが悪漢すごみやスチンカーとその一味。ひと夏かけて、放牧してあった牛たちをごっそり盗み出します。賞金をかけてスチンカー一味の捕り物が始まり、キャリコは、警察犬なみによく利く鼻をたよりに悪漢の隠れ家をつきとめます。首尾よくボスを捕らえて賞金をモノにしたハンクは、そのお金で村の子どもたちへのクリスマスプレゼントを買いに出かけます。その隙をついて脱走をはかったスチンカーは……。
まあ、息をもつかせぬ大活劇にページを繰る間ももどかしく、読み手も聞き手も身を乗り出して、ついつい声も高くなり、というふうで、読んでやってもきゃっきゃと喜んで寝てくれません。映画を観終わったときのような一種の陶酔感さえ味わえます。今ここにキャリコがいたらなあ、と思うのはアメリカの人ばかりではないでしょう。正義とは何か、絵本の中ように単純には決められませんが、いつでもどこでも子どもたちの笑顔を見ていたいものです。
バージニア・リー・バートン 作 瀬田貞二 訳 岩波書店 900円 (2001年 ’平成13年’ 12月24日 56回 杉原由美子)