木をかこう
教室(私は子どものためのパソコン教室もやっています)で、子どもたちにお絵かきソフトの手ほどきをするとき、一通り道具の説明をして、「ここに何でも好きなものを描いてみて」などど言ってそこを離れてしまうと、いつまでも何も描けない子がいました。
下手だから恥ずかしいと思うのか、慣れない場所で急に自分の素顔を暴かれるような気がして不安なのか、とにかく画面はまっ白けのまま。
そこで気がついたのですが、まず描いてみせること、が必要だったのです。「たとえばね、こーんなくまさんがいてね、これがおかあさんでしょ、それから……」。 おしゃべりしながら私が勝手に描き出すと、子どもはマウスをひったくって、夢中で絵を描き始めます。
オバサンのドベタな絵に比べたら自分のほうがマシと思うんでしょうか。ほんとに情けないことに、私はもともと絵とかお習字とかは大の苦手なのです。
そんな私の心強い味方が、この本です。タイトルの通り、木を描くためのヒントがぎっしり詰まっています。イタリアの著名なデザイナー、ブルーノ・ムナーリ氏が子ども向けに作りました。
木の伸び方のきまりを繰り返し説きながら、何十通りもの木を描いてみせてくれます。もちろん、すぐに本と同じものが描けるわけではありません。ただ、「わっ、おもしろそう、私にも描けるかも」そう思えるのが楽しいのです。
すてきな絵本のマネをしながら、子どもたちのお絵かきを見守っています。
ブルーノ・ムナーリ 作 須賀敦子 訳 至光社 1,429円 (2002年 ’平成14年’ 10月7日 66回 杉原由美子)