ウルスリのすず

 ウルスリは、スイスアルプスの小さな村に住んでいる少年です。ウルスリは、家畜の世話をしたり水を汲みに行ったり、おとうさんおかあさんのお手伝いをよくする子どもです。もちろん、仲間と遊ぶときが一番うれしい。きょうも、お祭りに使う鈴をもらいに駆け出して行きます。
 ところが、小さいウルスリは、もらった鈴も一番小さかったのです。こんな鈴を持って歩くのはいやだなあ……。落ち込んでいたウルスリは、いいことを思い出します。
 夏の間、ヤギたちを連れて行く山小屋に、特大の鈴が掛けてあったはずです。有頂天になったウルスリは、行先も告げずに、一人山へと登って行きます …… 。
 愛らしい少年が描かれたこの絵本の初版は、1945年に出ています。そんなことは何も知らなかった子どものころでさえ 「古めかしい絵本」に見えました。
 ところが、子どもを持って、じっくり読んでやってからは、「何度でも読みたい絵本」の仲間入りをしました。時代も環境も全く違う世界が描かれているのに、なぜなのでしょう。家族や生き物を大事に思う気持ちに共感するのかもしれません。絵も、一枚一枚が美しく、見飽きるということがありません。
 昨年東京で原画展が開かれたりして、注目を集めました。その影響もあってか、ごく若い方も買い求められるようになりました。今なら、6冊のシリーズが全部揃っています。

ゼリーナ・ヘンツ 文 アロイス・カリジェ 絵 大塚勇三 訳 岩波書店 2,300円
(2003年 ’平成15年’ 6月16日 77回 杉原由美子)

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