げんきなマドレーヌ

 「パリの、つたのからんだ ある古いやしきに・・・」とお話は始まります。そこに住んでいるのはドラキュラではなく、12人の女の子です。どうやらそこは、ミッション系の寄宿学校なのです。女の子たちは、きりりと美しいシスター、ミス・クラベルのもと、整然と規律正しい毎日を送っています、という説明が、きっちり10場面続きます。
 そこに、待ってましたとばかり規律破りの子どもが登場。その名をマドレーヌといいます。マドレーヌは、12人の中で一番のおちびさんのくせに、たいした度胸の持ち主で、お人形のようにおとなしい他の11人をいつもはらはらさせています。そしてとうとうある晩、何事にも動じないはずのミス・クラベルをあわてさせる事件が起きます・・・。
 とは言いましても、しょせん絵本の中のできごと、ご心配には及びません。それより何より、この絵本の魅力は、絵と訳文です。表紙の深い緑色は、初夏のパリに咲くマロニエの白い花を際立たせるための工夫と思われます。ミス・クラベルに導かれて行く子どもたちの正面に見えるのは、てっぺんにフランス国旗はためくエッフェル塔です。
 作者のベーメルマンスは、1898年、画家の息子としてオーストリアに生まれましたが、幸福な少年期は送っていません。学業半ばにしてアメリカに渡り、ほぼ独学で絵を描き続けました。仕事先のレストランの壁やテントに描いた絵が、絵本編集者の目にとまり、世に出るチャンスをつかみました。
 当時のベーメルマンスにとっては、パリは、私たち日本人と同じように憧れの街だったのです。マドレーヌたちは、次から次へと登場するパリの風物の案内人ともいえます。後年、熱心なファンもついて、ベーメルマンスは、パリとニューヨークを行ったり来たりできるようになります。
 瀬田貞二さんの訳は定評があり、あえて私見を述べません。続編の『マドレーヌといぬ』がさらに高い評価を受けていますので、ぜひ2冊揃えてご覧下さいますように。

ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作 瀬田貞二 訳 福音館書店 1,365円
(2004年 ’平成16年’ 5月26日 88回 杉原由美子)

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