木はいいなあ

 あなたの身の周りに、好きな木はありますか?毎日見える所に、手を触れられる所に、お気に入りの木があるのはいいものです。この絵本を作った人にも、きっとそういう木があったのだろうと思います。
 「木はいいなあ 木がたくさんあるのはいいなあ」
 と、子どもと会話をしているようなフレーズが繰り返され、木の効用が説かれます。暑いとき、木はこかげを作ってくれる、大風から、家や人を守ってくれる。季節とともに実を結び、葉を落とし、たき火で暖まることもできる。 子どもたちの遊び場になってくれるし、鳥たちは巣をかけてひなを育てる……。スケッチ風ののびのびとした絵が、 文章にぴったり合っていて、木のぬくもりや香りが思い出されてきます。
 例えば、子どものころ、毎日のように遊びに行っていたお宮の杉の大木。ある年の台風で根こそぎ倒れてしまったのですが、不思議なことに、お宮の建物や、他の木々、灯ろうなどは何一つ巻き添えにせずにみごとに一人(?)で倒れていました。その日から、 お宮の中に大きな天然のアスレチック遊具が出現したわけです。今にしてみれば、なんとバチ当たりな、という気もしますが、お宮の守り神である木の幹の上を走り回って、おにごっこを楽しんでいました。
 また、メダカやオタマジャクシを取った小川にはヤナギの枝が垂れていましたし、アゲハチョウの卵から羽化までをじっくり観察させてくれたカラタチの木もありました。
 お宮の大木は、子どもの遊び相手になってくれた後、いくつかに切り分けられて、材木屋さんのトラックで運び出されて行きました。小川のヤナギもアゲハのゆりかごだったカラタチも、辺り一帯が宅地造成され、刈り取られてしまいました。
 木は本来生命力が強く、品種によっては百年でも千年でも生きています。共に生きられるかどうかは、自然条件と、人間の暮らし方にかかっています。絵本の最後の場面にも、子どもが木を植える場面が描かれています。そうやって命を育て、見守って行くこともできるんだなと教えられる場面でした。

ユードリイ 作 シーモント 絵 さいおんじさちこ 訳 偕成社 1,050円
(2004年 ’平成16年’ 7月21日 91回 杉原由美子)

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