エレーナのインコ

 エレーナはメキシコに住む女の子です。お母さんといっしょに市場へ出かけたエレーナは、かごを山のように背負ってくるおじさんを見つけました。おじさんは何を売りに来たのでしょう。エレーナがついて行ってみると、 それは「小鳥屋」さんでした。かごの中には、色とりどりの小鳥が入っていたのです。
 見ると、中に一羽、みょうな様子をした小鳥が混じっていました。それは、生まれたばかりでまだ羽が生え揃っていないインコでした。何を思ったかおじさんは、「かぜをひかせないように。教えりゃ言葉も覚えるよ」と言って、その小鳥をエレーナにくれたのでした。
 エレーナは、インコに「ペロン」という名前をつけ、ごはんを食べさせたり言葉を教えたり、いっしょうけんめいに世話をしました。その甲斐あって、ペロンは羽もきれいに生え揃い、おしゃべりしたりいたずらしたりするようになりました。
 ある日のこと、エレーナは、ペロンのかごを庭の木の枝につるして、家畜たちにえさをやっていました。すきをみて逃げ出したヤギを追いかけていくうちに、天気が急に変わります。やっとヤギをつかまえたときには土砂降りになっていました。「ペロンがたいへん!」夢中で駆けつけたエレーナでしたが……。
 自分の不注意がもとで大事なものをなくしてしまう、人間にとってこれほどつらい試練はありません。エレーナは、人形作りを生業としているお母さんのサポートで、ペロンを失った痛手から立ち直って行きます。土をこねて、まず最初に作ったのはペロンでした。そして、さまざまな生き物の形に命を与えていき、一人前の人形作りに成長します。
 作者はご夫婦です。長い間メキシコで暮らしました。そのときの実体験がもとになっているそうで、なるほど、小鳥のぬくもりや、それを亡くしたときの悲しみがひしひしと伝わってきます。ご主人の手による、あたたかい木版画が、やすらぎを感じさせてくれます。

直江みちる 作 今井俊 絵 福音館書店 380円  (2004年 ’平成16年’ 10月20日 94回 杉原由美子)

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