ティリーのクリスマス

 ティリーは、小さな木の人形です。ティリーは、ドールハウスのメイドでした。掃除、洗濯、食事の用意……。朝から晩まで骨惜しみせず働くティリーに、ねぎらいの言葉をかけてくれる人はだれ1人いませんでした。そんな毎日に疑問を抱いたティリーは、ある日、自分の運命を変える決心をします。住み慣れたハウスを出て、「自由に暮らせて、何でも自分自身で決められる」家を探し始めたのです。
 と、ここまでは、ティリーの絵本の1作目です。この作品でティリーは、家ばかりでなく、心やさしい友だちを得ます。エドワードという名のクマの縫いぐるみです。2作目の「クリスマス」でティリーは、このエドワードを助けるために大活躍します。
 意気投合した2人は、ティリーの新居でクリスマスを迎える約束をします。ところが、モミの木を持ってきてくれるはずのエドワードがいつまで待っても現れず、とうとう夜が明けてしまいます。「エドワードの身になにか恐ろしいことがおきたんだわ」ティリーは、エドワードを探しに、街へと出て行きます。それは、ティリーにとって危険すぎる冒険でした。なにしろ、車や人や動物がひっきりなしに往来する通りを渡らなければならないのです。恐ろしくて、心細くて、ティリーは何度もめげそうになります。けれども、彼女はあきらめません。1つ乗り越えるたびに、ちょっぴり自信がついて大胆になっていく様子がまた見ものです。八百屋さんの棚に置かれて下りられなくなっていたエドワードを無事助け出したティリー。疲れ果てて、帰り道は逆にエドワードに助けてもらうのでした。
 ティリーは、有能なメイドだったくらいですから、子どもではありません。はっきり言って「オバサン」です。絵本版「オバサンの逆襲」とでもいいましょうか、自立したい、だけどひとりぼっちはいや、という女性の心理をつかんで理想的な友人関係を描いています。そう、それで私はこの絵本が大好きなのです。

フェイス・ジェイクス 作 小林いづみ 訳 こぐま社 1,260円
(2004年 ’平成16年’ 12月22日 96回 杉原由美子)

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