でてきておひさま
「あるとき、おおきな黒雲がそらをおおって、おひさまが三日もでてきませんでした……」。おひさまが恋しいひよこたちは、めんどりかあさんにお弁当を作ってもらって、おひさま探しに出発です。でも、おひさまって、見つけられるものでしょうか。
こわいもの知らずのひよこたちは、とりあえず出会った人にたずねます。「おひさまが、どこにすんでいるか知らないかい?」
するとだんだん道が開けてきます。かたつむり、かささぎ、うさぎ、かも、はりねずみと道案内人が増えていき、とうとうおひさまの家までやってきました。ここでもひよこたちは物おじしません。「でてきてよ、てらしてよ、もう、あさだよ!」
黒雲におおわれて真っ黒けになってふて寝しているおひさまをたたき起こし、みんなで力を合わせて、おひさまをふいたり、こすったり、みがいたりして、もとどおりのぴかぴかの姿にもどします。
おひさまをよみがえらせて、ひよこたちは家に帰ってきます。はればれと明るい空の下、めんどりかあさんとこくつぶをついばむひよこたち。はい、お手柄でした。小さなひよこたちが自分より大きくて年かさの動物に声をかけ、行動させて大願成就する、痛快な結末です。
これは、スロバキアの民話です。緯度をたどれば北海道より北に位置する国、おひさまの光にはさぞ敏感であろうと想像できます。堀内誠一さんは、最終ページで、おひさまが照り輝く一瞬を鮮やかに描き出しています。その画面からは、まぶしさ、あたたかさ、そして、うれしさまでも、感じ取ることができます。ことばも愉快なので、読み聞かせにも向いていると思います。
しばらく品切れでしたが、堀内氏の他の9冊と共に、来月復刊します。
スロバキア民話 堀内路子 再話 堀内誠一 絵 福音館書店 780円
(2005年 ’平成17年’ 3月16日 98回 杉原由美子)