空とぶ船と世界一のばか

 ある日、王さまが、国中に使いを走らせました。
 「空とぶ船を持ってきた者は、むすめの王女と結婚させてやる」というのです。運が開けるチャンスと、ちょっとばかり才能があるとうぬぼれている男たちは勇んで都へと旅立っていきます。「世界一のばか」と呼ばれている若者も、ピクニック気分でその列に加わります。おっかさんが持たせてくれたお弁当は、かさかさの黒パンと、水だけでしたけど。
 途中で出会った不思議な老人が、若者にたずねます。「それで、あんたは空とぶ船が作れるのかね?」若者は、いともあっさり答えます。「だめさ。作り方がわからない」「それじゃ、どうするつもりかね」「神さままかせだよ」そのひと言を待ってましたとばかり、とは書いてないのですが、もちろんここで若者の運命が変わっていきます。
 老人の言葉に素直に従った若者は、空とぶ船と、いざというとき頼りになる7人の仲間を得ることになります。そして、意気揚々とお城に乗り込みます。さて王さまにしてみれば、空とぶ船は欲しいけれど、風さいの上がらない田舎者に王女をくれてやるのは口惜しい、なんだかんだと条件を出して、若者とその仲間を追い払おうとします。
 「わしの食事が終わらないうちに、世界の果てにあるという命の水を持って来い」とかなんとか言って。若者の側には、きき耳やら、はや足やら、鉄砲の名人やらがいて、どんな難問も解決してしまいます。最後にはお城をすっかり取り囲むほどの大軍隊を出してみせて、「これ以上なにか文句ある?」
 ロシア民話がもとになっています。素朴な語りと、一見無造作にみえる筆致の絵のおかげで、お話のスケールが大きくなり、荒唐無稽な設定をのびのびと楽しむことができます。
 ほぼ20年ぶりに復刊されました。構成が緻密にできているので、現代の理屈っぽい子どもたちの感性にも耐えうると思います。そして、今風の言葉で感想を聞かせてくれるでしょう。たぶん、こんなふうに……「ありえんし~」「まじで~?」

アーサー・ランサム 文 ユリー・シュルヴィッツ 絵 神宮輝夫 訳 岩波書店 1,995円
(2005年 ’平成17年’ 6月22日 101回 杉原由美子)

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