モクレンおじさん

 早春に大きな花をぱあっと咲かせるモクレンの木。花のあとには実がなっていたんですね。モクレンの実は、キュウリのミニチュアみたいな感じです。拾ってきてままごと遊びに使いたいような。田島征三さんは、このモクレンの実をいっぱい集めて、それで絵本を創りました。
 モクレンおじさんと名付けられた主人公は、田島さんの用意した画用紙の上から飛び出して、モクモクレンレン歩き出し、森の中へと入っていきます。そこで出会った山桜の実の犬と友だちになり、いっしょに海へと向かいます。海辺で遊んでいるうちに、波に飲まれてしまう犬。レンレンレンレン泣くおじさん。でも、ご安心。犬はさかなに姿を変えて、モクレンおじさんめがけて泳いできます。モクモクレンレン。
 この絵本は、自然物を自然の中に置いて造形を施し、それを写真に撮って編集したものです。モクレンの咲いていたらしい庭、森、海辺へと場面が変わっていきます。すると不思議なことに、確かに空気のにおいが変わるのです。蒸し暑いところで読んでいるのに、 すがすがしい森の湿り気を感じたり、海の潮風を感じたり。4年がかりで仕上げたという苦心作というのも、うなづけます。
 田島さんが野菜や木の実を使って表現しているのは知っていました。インスタレーションというのでしょうか、絵画とも彫刻ともつかぬ、一定の空間を確保して造形する方法です。今住んでおられる伊豆や、東京や新潟などで展覧会がありました。ずいぶん前に富山に来られた縁で、その都度ご案内をくださるのですが、ついぞ観に行ったことがありません。ギャラリーへ行かないと鑑賞できなかった田島さんの作品が、絵本として誕生して、とてもうれしいです。モクレンおじさんを田島さんに重ねながら、どうかお元気でご活躍をと祈る私です。

田島征三 作 酒井敦 写真 福音館書店 410円  (2005年 ’平成17年’ 8月24日 103回 杉原由美子)

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