サンタクロースと小人たち

 オーロラの見える国、フィンランドの北にコルバトントリという山があります。この山のふもとには小さな村があります。小さいながらも、工場や倉庫や発電所、飛行場もあって、建物の間を大勢の小人たちが忙しそうに行ったり来たりしています。
 でも、不思議なことに、この村は地図に載っていないし、訪れる人もいないのです。この村で、いったいだれが何をしているのでしょう。 実はそこにはサンタクロースとその助手である小人たち、そのまた家族たちが住んでいて、1年をかけて、クリスマスプレゼントの準備をしているのです。
 木のおもちゃや乗り物を作る小人、お人形やぬいぐるみを縫う小人、本やゲームを印刷する小人、そして、トナカイの世話をする小人たち。郵便を受け取って地域別に分類する仕事は、外国語の分かる小人が担当します。そうそう、よい子がどこにいるか、調べる係もいますよ。みんな熱心に作業をして、クリスマスに備えます。
 そしていよいよクリスマスイブ。空を駆けるトナカイのソリに乗って、サンタが出発すると、プレゼントを満載した飛行機もまた、コルバトントリからつぎつぎに離陸していきます。世界中のよい子に行き渡るように、プレゼントは空中補給されるのです。なんとハイテクではありませんか。そういえば、フィンランドは現在、携帯電話産業では世界最大のシェアを誇っています。サンタと小人たちの通信手段を確保するために、技術革新を続けていたのですね。
 フィンランドは、ロシアとスウェーデンという強大な国にはさまれて、苦難を強いられた時代もあったのに、いえ、それだからこそ、平和の象徴ともいえるサンタの伝統を大切にしているのでしょう。出版後23年も経っているとは思えない、いつ読んでもわくわくさせてくれる絵本です。

マウリ・クンナス 作 いながきみはる 訳 偕成社 1,890円
(2005年 ’平成17年’ 12月21日 107回 杉原由美子)

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