とんとん とめてくださいな

 ある秋の日、3匹のねずみが山へハイキングに出かけた帰り道、深い霧にまかれて、迷子になってしまいます。途方にくれてあたりを見回すと、どうやら家が一軒あるようです。3匹はその家までたどり着くと、「とんとん とめてくださいな」と、かわるがわるドアをノックしました。さて。
 これが昔話なら、親切そうなおばあさんが出てきて「いいともいいとも、どうぞお入り」とか言われ、その気になっていると真夜中に料理されそうになりますが、ここではちょっと違います。
 ノックしても返事がないので、ねずみたちはそっと中に入ります。家の中では薪ストーブが燃えていて、その上には大きなお鍋がかかっています。いったいだれの家かしら。疲れきっていた3匹は、見かけによらず肝がすわっているらしく、 そこにあったベッドにもぐり込んで眠ってしまいます。
 やがて、「とんとん とめてくださいな」とドアをたたく者があります。ドアを開けてみると、やはり迷子になったうさぎが2匹。先客であるねずみが「どうぞどうぞ」と招き入れて、いっしょにベッドで休みます。と、またまた「とんとん とめてくださいな」とドアをたたく者。こんどは、たぬきが3匹でした。「ぼくたち道に迷ったんです。おまけに近くであやしいかげを見たんです」8匹の動物たちはベッドにかくれているほかありません。まもなく、どしんどしんという足音が近づき、いきなりドアが開けられたかと思うと、大きな黒いものがベッドのわきに立って……。
 家の主がだれなのか、実際に絵本を見ていれば分かる仕かけになっています。小さな絵本ながら、ミステリー仕立てになっていて、スリルを味わえます。一転してハッピーな結末になりますので、どうぞ安心してください。この3匹のねずみの絵本は、ほかに春・夏・冬編も出ています。隅ずみまで描き込まれた絵とねずみたちのおおらかな性格が楽しく、どれも人気があります。

こいでたん 文 こいでやすこ 絵 福音館書店 880円  (2006年 ’平成18年’ 9月20日 115回 杉原由美子)

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