ブラザーイーグル、シスタースカイ

 この絵本の副題は、「酋長シアトルからのメッセージ」といいます。シアトルといえば私たちにとっては、イチロー選手のホームグラウンドのある町です。
 もちろんその通りなのですが、元をたどればシアトルは、アメリカの先住民族の1つ、スクォミッシュのリーダーの名前なのです。シアトルの町があるアメリカ北西部のワシントン州一帯は、スクォミッシュ族の土地でした。では、なぜそこにシアトルの名が残ったのでしょうか。
 19世紀半ば、白人による土地の侵略は、アメリカ西海岸にまで達していました。1854年、政府は、スクォミッシュ族に対しても土地買収の契約書を突き付けてきました。2万年かけて創り上げたアメリカ先住民族の生活文化が、白人上陸後100年ほどで無残に踏みにじられてしまったこと、一族と共にその運命を引き受けなければならないこと、酋長シアトルの胸の内にはすさまじい嵐が吹き荒れていたに違いありません。
 契約にあたってシアトルは、祖先を含めたすべての部族の思いを込めて、静かに、また毅然としてスピーチを行います。
 「空が金で買えるだろうか? 雨や風をひとりじめできるだろうか? 祖先たちは私にこう告げた。大地はわれらのものでなく、われらが大地のものであると。」
 朗々と響くシアトルの言葉は、白人たちの心をも動かしました。白人の中の心ある者の手によって、シアトルのスピーチは記録され、彼の名は町の名となって後世に残りました。
 スピーチは、「この土地を買い取られるならば、大地や大気や川をいつくしみ守られるように。」と結ばれます。現代の環境問題を予見していたかのようですが、すべての自然現象、生き物が兄弟姉妹として互いにつながり合っているという、アメリカ先住民の思想そのものなのです。
 テキサスやミシシッピなど、アメリカの州名の半数は、先住民が使っていた地名を踏襲しているそうです。地名だけでなく、自然を大切にするその生き方も、私たちは学び、尊重していきたいものです。まずはこの絵本をじっくり味わってください。

スーザン・ジェファーズ 作 徳岡久生・中西 敏夫 訳 JULA出版局 1,835円
(2007年 ’平成19年’ 3月21日 120回 杉原由美子)

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