ソルビム

 以前この欄で、韓国の年中行事の一つ「チュソク」を描いた絵本をご紹介しました。「チュソク」は、 日本のお盆のお墓参りにそっくりの習わしでした。今回は、韓国の衣服についての絵本です。
 韓国の衣服といえば、ご存知、チマ・チョゴリ。日本の袴姿に似ていますが、実物は、より繊細、かつ躍動的でした。 町内の児童クラブで太閤山ランドのこどもみらい館へ行ったとき、世界の民族衣装コーナーで試着したことがあります。着物というより、ドレスの着心地です。踊り出したくなるような軽快さが子どもにうけて、チマ・チョゴリ姿で館内をはしゃぎ回るものですから、来館者の目を引き、たちまち試着希望者の長蛇の列ができました。
 この絵本では、新年を迎えた朝、6歳くらいの女の子が、真新しいチマ・チョゴリをひとりで身に着けていく姿を描いています。それが「ソルビム」といって、お母さんが作ってくれたお正月用の特別美しいチマ・チョゴリなのです。
 「福」の文字の模様がついている深紅のチマを腰に結び、綿入りのポソン(足袋)を履きます。色とりどりの布地に花の刺繍をほどこしたチョゴリに袖を通したら、ほどけてこないよう注意して胸の飾りひもを結びます。冠のようなペシテンギは、三つ編みにした髪に編み込んでおくのです。外は雪。防寒用の帽子と、毛皮で縁どりした上着も着なくては。仕上げにお父さんが買ってくれた絹の靴に足をいれると、まあ、ぴったりです。なんともゴージャスなお支度ができました。さあ、新年のごあいさつにお出かけです。
 作者のペ・ヒョンジュさんは、名門梨花女子大学を卒業後、イラストレーションを学びました。端正で気品のある絵からは、母国の文化への愛情と誇りが感じられます。この絵本に登場した女の子には弟がいて、その子がモデルとなった『ソルビム 男の子編』も最近邦訳されました。合わせてご覧下さい。

ペ・ヒョンジュ 絵・文 ピョン・キジャ 訳 セーラー出版 1,575円
(2007年 ’平成19年’ 11月21日 128回 杉原由美子)

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