クリスマス

 12月24日の朝のことです。「明日は、わたしたちにとって一番大切な人の誕生日です。だれの誕生日かわかりますか?」と先生が質問しました。元気よく手を上げた女の子がいます。ソフィーです。先生は喜んでソフィーに答えさせます。「それはだれですか?」「あたしです!」
 そうなんです。ソフィーは本当に12月25日生まれだったんです。それは別にだれが企んだわけでもありません。ソフィーはまた、クリスマスも知っています。ただ、それがイエス様の誕生日であるとの認識がなかっただけで。
 以上は、ソフィーという女の子が登場する愉快な本の書き出しの部分です。
 先生をあわてさせたソフィーにぜひ読んでやりたい絵本があります。それが今回ご紹介する『クリスマス』です。 この絵本は、クリスマスの起源を丁寧にたどったものです。
 キリスト教がヨーロッパの多くの国々で受け入れられ、 イエス生誕の日を祝うようになったのは、西暦300年くらいからなのだそうです。絵本の中では、それ以前からヨーロッパ各地に伝わっていた火と光にちなんだお祭りの数々を取りあげて、人々がクリスマスをより楽しく意味深いものにしていった経緯を教えてくれます。
 クリスマスの前後は、ヨーロッパにおいては、1年で最も暗くて寒い時期です。だからこそ、暖かい火、明るい光というものが、人々の心を一つにつなぐ重要なシンボルになったことはよく理解できます。クリスマスは、キリスト教のお祭りであるばかりでなく、春の訪れを約束してくれるものへの感謝と祝福の気持ちを表しているのです。
 作者のバーバラ・クーニーは、このほかにも、クリスマスの絵本を何冊か描いています。そこでは、子どもたちの切実な願い事がかなう日として、クリスマスがあります。戦争に行っていたお父さんが帰ってくる日、みなし子が温かい家庭に迎え入れてもらう日、病気の子どもを励まし続けたモミノキが奇跡を見た日、など。どれも、静かな画面ながら、心に深く染み入る作品です。

バーバラ・クーニー 作 安藤紀子 訳 長崎出版 1,575円  (2007年 ’平成19年’ 12月19日 129回 杉原由美子)

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