たんぽぽ

 晴天と満開の桜に恵まれて、今年の富山市のチンドンコンクールは大盛況でした。桜の花というのは、いったん開花すると夜中でも観賞が可能です。花見の宴は、桜の花が眠たがらないことが前提になっているのです。
 でも、花の中には、夜、起きていられないものもあります。例えば、たんぽぽがそうです。今回の『たんぽぽ』の絵本には、たんぽぽの生態が詳しく紹介されています。たんぽぽは、太陽の光がないと目を覚ましません。 春分の日から数日おいて、気温と日差しが安定してくると、赤ちゃんが目を覚ますようにぱっちりと花開きます。そして、日暮れになると「おやすみなさい」というふうに花は閉じてしまいます。雨の日はもちろん、曇りの日も花は閉じられています。閉じたり開いたりを繰り返しながら、たんぽぽは花びらの奥で大事な実を育てています。あのぎっしり詰まった花びらの1枚1枚に実がついているのです。
 花の時期が終わるとたんぽぽの茎は一度地面にたおれてしまいます。実が十分に熟したら、真っ白な綿ぼうしになって、すっくりと起き上がってきます。そして、風にのって、綿毛たちが旅立って行くのです。
 今なら、庭か道ばたに必ず咲いています。もしも掘り出せるようだったら、シャベルで掘り出してみてください。それがなかなかたいへんな作業になるはずです。あの小さな花の下に、時には1メートル以上もの根っこが伸びているからです。 厳しい冬を越せるのも、その丈夫な根かわいい花の持つ、驚くべき生命力をこの絵本で知らされました。
 通勤に使うJRの駅のホーム横に、たんぽぽが群生しています。学校の教室二つ分ほどの広さの空き地に、ピーク時は800個以上の花が咲きます。みごとな眺めです。桜とはまた違う、元気な子どもたちの集まりのような、ほほえましく、エネルギッシュな光景が、5月の連休ころまで見ることができます。

平山和子 文・絵 北村四郎 監修 福音館書店 880円  (2008年 ’平成20年’ 4月16日 132回 杉原由美子)

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