ぼく ねむくないよ
ラッセは元気な5歳の子。「ぼく、ねむくないよ!」毎晩そう言ってお母さんを困らせています。ある日、上の階に住んでいるロッテンおばあさんのところへ遊びに行くと、おばあさんは、ラッセにふしぎなめがねを貸してくれました。
ふしぎなめがねをかけると、森に住んでいるクマの親子が見えました。子グマのナッレは、昼間の川遊びを楽しく思い出しながら、今静かに寝入るところでした。ふしぎなめがねはまた、ウサギの10匹兄弟を見せてくれました。まくら投げをして騒いでいたウサギたちも、1匹が眠るとあっという間に全員寝静まってしまいました。リスやネズミの家も見えました。みな、お父さんやお母さんを手こずらせながらもベッドへもぐり込んでいくのでした。
おや、もう1つ、ことりの巣がみえます。ここでは1羽、眠れない子がいます。ことりのノッセは起きています。いっしょに生まれた兄弟たちはもう上手に飛べるのに、ノッセはまだ。口惜しくてたまらないノッセは、あしたは朝早くから練習するんだと、気持ちが高ぶっているのです。
めがねを外したラッセは、おばあさんにお礼を言って、静かにうちに帰りました。そして、 お母さんに言われる前にちゃんと服を着替え、歯をみがき、体も拭いて、ベッドに入ったのでした。
作者のリンドグレーンは、「長くつしたのピッピ」などでおなじみのスウェーデンの作家です。自らの子ども時代を熱烈に愛した人で、子どもの気持ちを持ち続けて大人になったと言っている通り、その作品はどれも無理なく、子どもの心をつかみます。「夜明けが待ち遠しい」とでも言ったらいいのでしょうか。十分に遊んだ後の睡眠は、明日の幸福を約束してくれます。ラッセにもそのメッセージが伝わったのでしょうね。自然の香りのするヴィークランドの絵もとてもすばらしいです。今月末、この画家の伝記が出版される予定です。こちらも楽しみです。
リンドグレーン 作 ヴィークランド 絵 ヤンソン由実子 訳 岩波書店 1,575円
(2008年 ’平成20年’ 5月21日 133回 杉原由美子)