里山の道

 まずは、「さとやま」という響きに、すっかり心がくつろいでしまいます。そして、本を開けば、期待どおりに懐かしい田んぼの風景が現われます。ここはどこだろう、季節は田植え前の早春かな、そうそう、れんげの花が咲いている。いっぱい摘んで花輪を編んだっけ。自分の知っている場所かもしれない、 ついそう思ってしまうような写真ばかりです。
 撮影者は、昆虫写真家の今森光彦さん。場所は、今森氏が生まれ育った滋賀県の琵琶湖周辺です。琵琶湖の周囲は起伏に富んだ地形なので、棚田も多く、道は大きく弧を描いて村々をつないでいます。冬には雪景色が見られ、北陸に住む私たちにも、相通じる季節感があるのでしょう。ぜひとも手元に置きたいというお客様が続きました。
 面白いのは、昆虫の撮影がお得意の今森氏が、風景の中にこっそり小さな生き物たちを登場させているところ。カナヘビ、アマガエル、キリギリス、カブトムシ、ホタル、まだまだいますよ。景色の中にしっかりはまって、それぞれの仕事に精を出しています。
 美しい里山の風景は、そこに住む人たちの毎日の営みがあってこそ成り立っています。そのままの自然と人の手が加わった部分とが絶妙の均衡を保っている場所、と言ったらいいのでしょうか。この本を子どもといっしょにながめると、写真には写っていない人々の暮らしをあれこれ想像して、絵本を楽しむのと同じようなことになりそうです。

今森光彦 作 新潮社 2,835円  (2008年 ’平成20年’ 9月17日 137回 杉原由美子)

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