メコン 源流をもとめて

 メコン川は、インドシナ半島を縦断して南シナ海に注ぐ大河です。全長4200㌔は、日本列島の1.5倍の長さに相当します。写真家の鎌澤久也さんは、大好きな東南アジアをたびたび訪れているうちに、このメコン川の始まりを見たくなりました。
 とは言っても、4200㌔という長さもすごいが、源流との標高差ときたら4800㍍もあるのです。おまけに、メコン川は、六つの国を潤しながら悠然と流れ下っています。川に沿ってさかのぼろうとすれば、人間は、国境というやっかいな関門もくぐり抜けなければなりません。
 メコン川の河口は、メコンデルタと呼ばれる豊穣な土地になっています。中年以上の年代の者にとっては、ベトナム戦禍の記憶を呼び覚まされる地名です。幸いにして、今は平和な水上マーケットの風景を見ることができます。小船に色とりどりの季節の農産物や魚介類を乗せて商売をしています。便宜上、ガソリンスタンドも川沿いで営業することに。なにしろ川幅が広すぎて、橋もありません。通勤通学ももっぱら渡し舟が頼りです。そんなメコンデルタですから、船の交通安全のために、道路わきならぬ、川わきに、交通標識も整備されています。
 活気に満ちたベトナムを過ぎて、カンボジアへ。メコン川の支流の1本に沿って進むと、世界遺産のアンコールワットの遺跡が現れます。なんと、遺跡にのぼって日向ぼっこをしている子どもたちがいますよ。
 ラオスにも世界遺産に指定されている古都があります。ルアンパバンという日本で言うところの門前町。お寺とお坊さんがとても大切にされているのです。
 タイ、ミャンマーも通って、いよいよ源流があるはずの中国、チベット自治区に入ります。さすがに川幅は狭くなり、道らしきものもありません。遊牧民のガイドさんと、馬にゆられて進みます。対岸も見えないメコン川が、ちょろちょろ流れるほんの小川になってしまいました。さて、メコンの源流には、本当に出会えるのでしょうか。
 川の始まりを見つけに行く、という冒険は大好きです。はるか昔、高校の野外学習で、地理の先生が「分水嶺」なる場所へ私たちを引率して下さいました。場所は岐阜県ひるがの高原。そこでは、北へ向かって流れる庄川と、南へ向かって流れる長良川の両方が見られるのです。メコンの雄大さには及ばないけれど、なかなかロマンを感じる一瞬ではありました。

鎌澤久也 文・写真 福音館書店 700円  (2008年 ’平成20年’ 10月22日 138回 杉原由美子)

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