じめんのしたのなかまたち
寒くなってきました。灯油代が気になる私に向かって近所の奥さんが、「ウチは今年からオール電化よ」とおっしゃいました。電気代の節約にはこれが一番という結論に達したそうで。電気代の節約になってもエネルギー資源の節約にはなってないんだよ、と時代に乗り遅れた半人前の主婦はひねくれていたのでした。
クリーンエネルギーで暖かくなりたいわたしには、とっておきの絵本があります。この「じめんのしたのなかまたち」は、 娘たちも表紙を見るなり、「これ、あったかいねー」と言ってくれました。地上には雪が降り始めていますが、地中に住む虫たちはなにやら楽しげに過ごしています。
仲良し5人組は、ミミズの双子シュヌープとクヌープ、てんとう虫のロトロ、ガの幼虫リア、そして自分が何者なのかがよくわかっていない、いも虫のエンゲリンです。5人は時々エンゲリンの家に集まってトランプをします。いつも負けてメソメソするロトロをなぐさめるのは、やさしいリアです。
ある日、いつものようにトランプをしようと集まったら、リアが来ません。心配になったロトロが迎えに行ってみると、リアはあたたかそうな毛布にくるまって眠っているのでした。「だいじょうぶ?」とロトロが声をかけると、「わたし、きれいな夢をみているの」と答えるリアでした。
ようやく暗くさびしい冬が終わり、地面の上に出た4人が見たのは、美しい羽根をつけて優雅に空を舞うリアでした。エンゲリンは夢中になって叫びます。「きみ、ほんとうに飛んでいるんだね。ぼくは夢の中でしか飛べないっていうのに。」 リアはいつものようにやさしく答えます。「そのうちあなたも飛べるようになるわ。」
子どもがまだ小さかったころは気づかなかったのですが、春に次女が都会へ出て行った今、リアの言葉にはっとさせられました。家族みんなでいれば暖かいと思っていても、そうか、いつかはみな飛び立って行くのか、と。今のうちに子どもたちからのエネルギーを充電しておきましょう。
エベリーン・ハスラー 文 ケティ・ベント 絵 若林ひとみ 訳 冨山房 1,470円
(2008年 ’平成20年’ 11月19日 139回 杉原由美子)