タンタンタンゴはパパふたり
タンゴはアゴヒモペンギンの子どもです。ペンギンの子どもですから、もともとはタマゴでした。タンゴのママは、タマゴを二つ産みました。そして、一つしか温めませんでした。なぜそうしたのかは分かりませんが、一つしか温めませんでした。
タンゴの入っているほうのタマゴは巣の外にころがっていたのです。それが南極で起きたことだったら、タマゴはすぐに死んでしまっていたでしょう。でも、幸運なことに、そこはニューヨークのセントラルパークの動物園でした。
この動物園には、変わったペンギンのペアがいました。ロイとシロの2匹です。2匹とも雄なのですが、他のペアと同じようにいつも仲良く行動し、巣作りもしていたのです。そして、巣の中にはタマゴにそっくりな石ころが。交代でタマゴ(石)を温め続けるロイとシロ。仲間たちの巣からはかわいいヒナがよちよちと出てくるのに、ロイとシロの巣のタマゴ(石)はいっこうに変化しません。それでも温め続けるロイとシロ。
「この子たちに預けてみたらいいかも」
絶望的な2匹の努力に気づいた飼育係のグラムジーさんはひらめきました。せっかく二つ産んでも、一つしか育てられないペアがいることをグラムジーさんは知っていました。そこで、ほっておかれたタマゴを探し出し、ロイとシロのタマゴ(石)とすり替えたのです。
そして生まれてきたのがタンゴというわけです。タンゴという娘を得て、ほんとうに幸せな家族になれた3匹でした。セントラルパークを訪れる家族連れの人気者になったことは言うまでもありません。
娘たちに読んでやると、「なんでパパが二人なのさ」と腑に落ちない下の娘。すかさず上の娘が、「だからね、大事なのはタンゴが生まれてきたってことなんだよ」はい、その通りです。何も付け加えることはありません。
ジャスティン・リチャードソン&ピーター・パーネル 文
ヘンリー・コール 絵 尾辻かな子・前田和男 訳 ポット出版 1,575円
(2009年 ’平成21年’ 5月20日 144回 杉原由美子)