かぐやひめ

 千年以上も前のこと、澄みきった秋の夜空の月を眺めながら物語の構想を練った人がいました。その人は、この世では得ることのできない、永遠の美しさを持つ姫を登場させようと考えました。それが「いまは昔、 竹取の翁というもの有りけり」で始まる「竹取物語」です。「かぐやひめ」の名で、さまざまな形で出版され、子どもたちにも親しまれていますが、いわゆる「昔話」とか「お伽話」ではなくて、創作物語の元祖、日本最古の文学作品なのです。
 文学作品としての格調を崩すことなく絵本化されているのが今回ご紹介する「かぐやひめ」です。文章は、源氏物語の現代語訳も手がけている作家の円地文子氏。一読して、文章のまとまりの良さ、話し言葉の美しさ、敬語の使いかたの巧みさに感服してしまいました。
 「竹取物語」で表現されている、人間の欲望や失望、喜びや悲しみを、少しでも伝えたいと、限られた字数にみごとに凝縮して書かれてあります。子どもに読んで聞かせながら、自分で書いたわけでもないのに「日本語ってこんなに表現力があるんだ」と大満足していました。
 日本画家の秋野不矩氏は、源氏物語絵巻の研究者でもあります。この「かぐやひめ」でも、各ページの絵はもちろんのこと、表紙から見返しに至るまで、絵巻の雰囲気を十分に味わうことができます。かぐやひめには神々しいまでの美しさがあり、狩り衣姿の帝には、他の貴公子たちにはない高貴なオーラが漂っています。なんと贅沢な楽しみかと思います。
 ご両人とも、文化勲章の受章者でもあります。よくぞ作ってくださった、と感謝せずにいられません。
 今年の中秋の名月は、10月3日になるそうです。よい月が見られたらいいですね。

円地文子 文 秋野不矩 絵 岩崎書店 1,575円  (2009年 ’平成21年’ 9月16日 148回 杉原由美子)

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