やっぱりおおかみ

 「オオカミは もういないとみんな思っていますが、本当は一匹だけ生き残っていたのです。子どものオオカミでした。」
 この、なんとも意味ありげな書き出しにつられて、一気に読ませる絵本です。孤独なオオカミの子どもは、仲間を求めて動物界をさすらううちに、徐々に現実を認識していきます。例えばウサギの町、例えばブタの市場、例えばシカの公園……。どこ一つをとっても、オオカミを歓迎する場はありません。当然のことながら。
 居場所を見つけられずに、街はずれの墓地で夜を明かすオオカミ。無言で思索にふけるひとりぼっちのオオカミ。どうみても一睡もできなかったらしいオオカミの悩みの深さに、しばしページをめくる手も止まります。泣かせる場面です。
 さて、一夜明けて、オオカミの心境はどう変化したでしょうか。作中のオオカミの姿は、全体が黒一色で、目の位置もわかりません。セリフもごく少なくて、絵本自体がコマ割り漫画の体裁です。それなのに、刻々と変化するオオカミの感情が伝わってきます。そして、他人ごとに思えなくなってきます。最後に「やっぱりオレは…」と決意表明するくだりでは、思わずこちらも手に力が入ったりして。
 初めて読んだのが学生のころだったためか、本当に印象の強い1冊です。初版本を買って、裏見返しの隅に「待ちに待ってた本!」なんて自分のサインを入れていて、今となってはちょっと恥ずかしいくらいです。
 作者の佐々木マキ氏はユーモラスな作風で知られています。この絵本の中にも、隠し絵がいっぱい。楽しみの多い絵本です。

佐々木マキ 作・絵 福音館書店 840円  (2009年 ’平成21年’ 11月18日 150回 杉原由美子)

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