ロバの子シュシュ
ロバのシュシュはフランスの山の牧場で、牛乳運びの仕事をしていました。毎朝しぼりたての牛乳を背負って、ふもとの町まで届けます。実をいうと、シュシュはこの仕事に飽き飽きしていました。もっと面白いことが起こればいいのにと思っていたのです。
すると、来ましたよ、面白そうな人が。その青年もまた、何か珍しいことをやりたいと考えていたようです。そして、シュシュと出会って、ピンときたのです。シュシュは青年に買い取られて町に住むことになりました。
青年は、写真屋をしていましたが、訳あって、お客さんを増やしたいと思っていました。彼は、お客さんをシュシュと並ばせたり、背中に座らせたり、さまざまなポーズをつけて写真を撮りました。これがたいそう評判になって店は大繁盛。特に子どもたちはシュシュが大好きになりました。青年は喜んでシュシュに報告します。
「これでぼくはお嫁さんに指輪を買ってあげられるよ。君のおかげだよ」
ふむふむ、そういう訳でしたか。シュシュもとても幸せでした。ところがここで大事件発生です。シュシュが写真を撮りにきた男の子の指を噛んでけがをさせてしまったのです。激怒した親は警察に通報し、シュシュはろう屋に入れられてしまいました。せっかくうまく行っていたのに……。
子どもたちが知恵を絞ってシュシュを助け出すくだりは、ぜひ本書を手に取ってお楽しみください。そして、内藤里永子さんの、お父さん譲りのうたうように滑らかな訳文も味わってみてください。
以前、同じ作者の「まりーちゃんとひつじ」をご紹介しました。そのひつじの名前は「ぱたぽん」というのでした。ぱたぽんもシュシュも、人の気持ちを優しくしてくれる、かけがえのない生き物の代名詞として語り継がれていくと思います。
フランソワーズ 作 ないとう りえこ訳 徳間書店 1,470円 (2011年 ’平成23年’ 6月22日 167回 杉原由美子)