わたしのおふねマギーB
暑くなってきました。海に出かける絵本はいかがですか。
ある晩、マーガレット・バーンステイブルは、お星さまにお願いをしました。「わたしの名前をつけたお船がほしいの。仲良しのだれかといっしょに、思いっきり海を走りたいの」。 目覚めてみると、マーガレットと弟のジェームスぼうやは、小さいけれど乗り心地のよい船、「マギーB」の中にいました。
舞台美術のような絵本です。お祈りをして静かに眠りにつく場面から、ぱっと明るい朝の船上へ。マーガレットの衣装も、寝巻きから、きりりとした青系のストライプに替わります。船室には台所があり、お昼のサンドイッチやおやつのクッキー、夕飯のシチューもそこで作ります。デッキは菜園になっていて、野菜や果物が実り、ミルクをくれるヤギもいます。
さんさんと降りそそぐ日の光を浴びて、「マギーB」は元気に海を渡っていきます。いつのまにか、マーガレットの衣装は花柄に。うれしい気持ちを表現しているのでしょうか。ところが空が急に暗くなり、嵐がやってきました。たいへんです、船と弟を守らなくてはなりません……。
実際に舞台美術家でもある作者は、画面いっぱいに調度品や食べ物やおもちゃを描き込んで、雰囲気を盛り上げています。カラーとモノクロが交互に現れる作りの絵本であることを忘れるくらい、あふれんばかりの色彩に圧倒されます。
マーガレットはまた、歌をうたったり、絵を描いたり、ジェームスぼうやをお風呂にいれたりと大忙しなので、読み応えも十分。 船の中の、たった1日のことなのに、しっかりと記憶に残ります。それは、「マギーB」が、満ち足りた家庭生活そのものだからかもしれません。
うちでは、子どもたちが「お母さんの好きな絵本」の筆頭に挙げる本です。
久しぶりに復刊されました。どうぞお見逃しなく。
アイリーン・ハース 作 内田莉莎子 訳 福音館書店 1,365円
(2012年 ’平成24年’ 6月20日 178回 杉原由美子)