地球のひみつをさぐる

 これは科学の絵本で、しかけ絵本でもあります。
 地球がいつ、どのようにできたか、という説明から始まります。宇宙の始まりが138億年前で、地球の始まりが46億年前で、さらに生命が誕生したのは38億年前で……。数字をいくら並べてもぴんとこない私ですが、これを時計の文字盤に書き込んで針を回す 「しかけ」を使ってみていくと、概略がつかめてきます。地球が生まれたのが24時間前だったとすると、 人類の歴史はそのうちのたった14秒ぶんしかありません。
 地球がひとつの生命体であるということも学べます。私たちが生活している地表は、卵の殻のようなもの。 内部に詰まっているマントルは常に熱くうねっていて、人間の生活とは無関係に地表に変化をもたらします。地震や津波が起きるのはそのためなのです。2度開く絵本の「しかけ」で、地球の断面がわかりやすくなっています。
 地球の表面についても学べます。太陽はまんべんなく地球を温めています。それによって風が吹いたり雨が降ったり、 海の水さえも規則的に流れるようになっています。それなのに、化石燃料を多用することで、人類が地球の気温を高くしてしまったために、 極端な気象現象が起こるようになりました。異常気象と呼ばれる現象です。
 異常気象を抑えるためには、二酸化炭素を減らすことが大事ですが、 そこで作者は、植物の働きぶりを教えてくれます。人類が過剰に排出した二酸化炭素を、植物は、太陽の光の力を借りて、 酸素と糖に変えてくれるのです。見開きいっぱいに描かれた木は、ポップアップの「しかけ」になっています。
 さまざまな「しかけ」にひかれて、隅々まで読み進むうちに、地球に住む私たちが、今日からやるべきことがみえてきます。 データも新しく、深い内容を面白く伝えている本です。
 入荷早々、小学校5年生のお子さんへの贈り物にと、お買い上げくださった方がありました。しかけ絵本という形式をとることで、人類に課された差し迫った問題を年少者も共有できることになったと実感できて、うれしかったです。科学の本は、科学の進歩のために作られるのですから。

クリスチアーナ・ドリオン 文 ビヴァリー・ヤング 絵 福本友美子 訳 ひさかたチャイルド 2,592円
(2015年 ’平成27年’ 8月19日 213回 杉原由美子)

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