大地のめぐみ 土の力大作戦

 田植えが終わったばかりの水田は、土も水も豊かにたたえて、これから育ってゆく稲の苗を守っています。当たり前のように思っているこの初夏の風景は、 いつ頃から見られるようになったのでしょうか。
 この絵本の作者、かこさとしさんは、科学者として、「大地」と「土」の成り立ちと、その大切さを分かりやすく教えてくれます。
 地球の原形ができたのは46億年前くらいです。その時、地球は、熱い岩の固まりでした。雨が降って海ができ、生命が誕生するのは、38億年前くらい。 その頃もまだ土の大地はありませんでした。水と太陽と風が岩石を次第に砂粒に変え、原始的な植物や生命体の死骸などとともに、 「土」とよべる物体を形つくっていきました。それが、約5億年前のことだそうです。
 「土」は、適度に水を含んでいて、植物が成長するのに適しています。人間も他の動物も、植物を食べることで生きているのですから、 「土」がどんなに大切なものか、分かります。でも、地球の表面の「土」の深さはせいぜい50㌢くらい。それより深く掘っても、 岩や粘土や地下水に阻まれてしまうのです。
 しかも地表は、雨水に削り取られたり、風に吹き飛ばされたり、太陽の熱で水分を奪われたりと、放っておいたら、 豊かな「土」がどんどん消えていってしまうのです。この絵本では、増え続ける人間の食物の根源となる「土」をどうかして守ろう、増やしていこう、 という具体的な提案をしています。植林や、ため池や輪作などです。
 かこさんは、戦後の食糧難の一時期、父親の故郷の農村に移り住んだことがあります。農民としては素人だったかこさん家族が、 近所の農家の人に手伝ってもらって耕作を始めたところ、「自分の土地の耕作権を放棄した」として、農地委員会に土地を接収されてしまったそうです。 耕作地を守り切れなかった、かこさん家族の無念さを思うと同時に、放射能汚染の農地をブルドーザーで深くえぐり取られてしまった福島の農家の人たちが思い出されてなりません。

かこさとし 作 小峰書店 1,404円  (2016年 ’平成28年’ 5月25日 222回 杉原由美子)

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