ひまなこなべ

 可愛らしい女の子やネコの絵本をたくさん作っている、どいかやさんがアイヌの言い伝えを絵本にしました。
 表紙の愛嬌のあるクマは、実は神さまなのです。神さまのクマは、心がけのよさそうなアイヌに自ら身を捧げて、その獲物になって、村へ運ばれます。 神さまクマの思ったとおり、そのアイヌはとても信心深くて、狩ったクマを大切に扱い、丁寧に感謝の祈りを捧げ、村中の人を招待して、大がかりな宴を催します。
 大勢の老若男女が、歌ったり踊ったりユカラを語ったり、それはそれは楽しそうな宴会のようすに、神さまクマも大満足です。そして、みんなの中に、ずば抜けて踊りの上手な若者がいることに気がついたのでした。「おや、あれはいったい何者だろう」
 狩られて解体された神さまクマですが、その気になれば、再び同じ村に獲物としてやってくることが可能なのでした。踊りの上手な若者の正体を知りたくて、二度三度とやってきて、とうとう正体をつかみます。それが、「ひまなこなべ」。
 宴会の時、大鍋中鍋はごちそう作りに駆り出されて忙しいけど、 「小鍋は暇だから、こうやって踊っているんです」というわけ。小鍋にも神さまが宿っていたんですね。達者な踊りで神さまクマを引き付け、 日ごろ大事にしてくれている家族に恩返しをしたのです。命や物を大切にすることで、幸運が巡ってくるというアイヌの教えです。
 アイヌの絵本も読み物もとても少ないのが現状です。どいかやさんの優しい絵によってアイヌの世界に導かれるのは、とてもうれしいことです。 アイヌをもっと読みたい、知りたいにつながるからです。
 どいさんの柔らかい色鉛筆画に、背景のベージュ色がとても合っていると思ったら、その正体は、富山県五箇山産の悠久紙という和紙なのでした。 ちょうど今ごろが、原料の楮の雪さらしの時期です。もしも機会があれば、どいさんに、悠久紙との出合いについてお伺いしたいものです。

萱野茂 文 どいかや 絵 あすなろ書房 1,512円  (2017年 ’平成29年’ 2月22日 230回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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