ラマダンのお月さま
「ラマダン」とは、イスラム教徒の人々が断食する時期のことです。新月から新月の間の約1カ月間、昼間の飲食を控えます。 でも、仕事や勉強を休むわけではありませんから、なかなかつらいです。どうしてそんなつらいことを我慢できるのか、この絵本を読むと分かってきます。
表紙の、ブランコに乗っている女の子、なんとなくうれしそうにしています。空にかかるお月さまが、ラマダンの始まりを告げているからです。 細い細い月、新月が確認されてラマダンが始まったのです。ラマダンの間、昼間はなるべくエネルギーを浪費しないように過ごしますが、 日が昇る前と日が暮れてからは飲んだり食べたりできます。
大人たちは、いつもより熱心に礼拝をし、コーランを読みます。また、身の周りの不要になったものを集めてきて、必要としているところへ届けます。 断食にも、「食べられないことのつらさを体験して、食べられることを感謝する」という意味があるのです。
お月さまが、新月からだんだん太って満月になり、まただんだん細くなって次の新月を迎えると、ラマダン明けのイードというお祭りが始まります。 新しい服を着て、お客さまをもてなしたり、およばれにいったり、互いに贈り物をし合ったり。そう、お正月とクリスマスがいっぺんにきたような楽しさです。 世界中のイスラム教徒が同じ気持ちで過ごしていると思って、さらに幸せになれるのです。
絵本の画面は、いろいろな布と紙を切り貼りして作ってあります。あるページには、コーランそのものを使っています。 その上に、繊細なペン描きで人物や動植物、建物や家具などの輪郭を描き込んでいます。古風な背景の中に現代イスラムの躍動的な生活が現れて、西でもない、 東でもない、独特の生活空間を感じ取れます。
今年のラマダンは5月27日から6月25日になるそうです。イスラム教のお祭り、絵本を通して味わってみませんか。作者は違いますが、 『イードのおくりもの』(光村教育図書)という絵本も、前田君江さんの訳で出ています。どうぞ併せてご覧ください。
ナイマ・B.ロバート 文 シーリーン・アドル 絵 前田 君江 訳 解放出版社 2,160円 (2017年 ’平成29年’ 5月24日 233回 杉原由美子)