おもいでのクリスマスツリー

 本物のクリスマスツリーというものがあるとしたら、それはどこにあって、どれくらいの大きさで、てっぺんにはやっぱりお星さまがついているのでしょうか。
 世界一のクリスマスツリーを標榜するツリーなら、今年、神戸に立てられたらしいです。でも、新聞やネットの画面で見る限り、か細くて寒そうで、 とても堂々と世界一をアピールしているようには見えませんでした。
 立てた人たちには、高さが1番だから1番なんだという言い分があるのでしょうが、クリスマスツリーの役割は、 周りを囲む人々が幸せな気持ちになることではないでしょうか。その点、この絵本のツリーは、幸せをもたらすツリーでした。
 アパラチア山脈の奥の村に住むルーシーの家は、その年、クリスマスツリーの木を準備する当番に当たっていました。 お父さんは、ごつごつした岩場に生える丈夫な木、バルサムモミにしようと決めていて、春のうちにルーシーを連れて山に登り、 枝ぶりのよい元気なバルサムモミを選んで、目印の赤いリボンを結んでいました。
 ところが、戦争が始まって、お父さんは従軍してしまったのです。これは、第一次大戦の末期を指していて、1918年ということになります。 働き手をなくして、収穫が減り、お金もなくなってきたのに、ツリー当番の家の子どもは、教会のクリスマス劇で大事な役を振られていて、 その衣装も用意しなければならないのです。そして、ルーシーがサンタさんにお願いしているお人形はどうなるのでしょう。
 教会の牧師さんは、「来年の当番の人に代わってもらってもいいのですよ」と助言してくれますが、ルーシーのお母さんは、 「いいえ。今年はうちでたてさせていただきます」と、きっぱり答えます。でも、クリスマスイブの前日の夜になってもお父さんは帰ってきません。 お母さんは、馬にそりをつけると、雪の山を登って目印のついた木を探すのでした。ルーシーのお人形は、そして一番の願いのおとうさんの帰還はかなうのでしょうか。
 クリスマスツリーに込められた希望が、大人も子どもも精いっぱいの力を出すことで、かなえられていくストーリーがうれしいです。 作者のおばあさんの身に起こった実話であることも、書き添えてあります。

グロリア・ヒューストン 文 バーバラ・クーニー 絵 よしだしんいち 訳 ほるぷ出版 1,620円
(2017年 ’平成29年’ 12月20日 240回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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