アヤンダ

 今回は、富山県内にお住まいのアフリカ文学研究者村田はるせさんが翻訳した絵本をご紹介します。
 舞台はアフリカ?いいえ、舞台は世界のすべての地域です。
 アヤンダはお父さん、お母さん、おばあちゃん、そして弟といっしょに穏やかに暮らしていました。アヤンダは、とりわけお父さんが大好きでした。 それなのに、ある日突然戦争が始まって、お父さんは戦いに駆り出されて、そして、帰って来ませんでした。
 悲しみのあまり、アヤンダは「戦争するくらいなら大人になりたくない」と、大きくなることを止めてしまいます。 友だちが大きくなって美しい娘になっていくのにも無関心でした。でも、お母さんが病気になったり、おばあちゃんが亡くなったり、村が凶悪な強盗に襲われたり、 次々に災難に見舞われる度にアヤンダは大きく大きくなって、家族や村人を窮地から救います。
 おかげですっかり英雄扱いされるアヤンダですが、無我夢中で人助けをしているうちに、家の中に入れないくらいに大きくなってしまっていたのです。 草原に横たわって、お星さまに「村の女の子たちみたいに暮らしたいだけなの」と願ったとき、願いは聞き届けられ、家に入って、 家族といっしょに暮らせるようになったのでした。
 このお話の原本は、フランスに生まれてコートジボワールで育った女性が、 イタリアのジャンニ・ロダーリ(『チポリーノの冒険』の作者ですね)の作品から着想を得てお話を書き、まずフランスで出版したものです。 なんとも、複雑ですよね。何国人が何語でどこを舞台にして、だれのために書いたんですか?と初めから聞き直さなくてはなりません。 それくらいに、作者のタジョさんにとっても、読者であるアフリカの子どもたちにとっても、出版物が日常に根付いていないのです。 アフリカが、欧米諸国による長い植民地政策の犠牲になっていたからです。
 翻訳者の村田はるせさんの経歴も決して単純ではありません。13日の「北陸ひと模様」の欄で紹介されていましたが、その他にも、 ニジェールで保育士として活動中にマラリアに罹って九死に一生を得たとか、アヤンダに負けず劣らずの艱難辛苦を乗り越えてきた勇気ある女性です。 これからのますますのご活躍を祈ります。

ヴェロニク・タジョ 作 ベルトラン・デュボワ 絵 村田はるせ 訳 風濤社 1,620円
(2018年 ’平成30年’ 5月23日 245回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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