パンのずかん
新米の季節になりました。しかし、現在の日本の家庭では、朝ごはんは、「ご飯」ではなくて「パン食」している割合が若干高くなっているようで、「朝ごはん食べた?」とたずねる場合は、気をつけないといけません。
我が家は米作り農家でもあるので、毎朝ご飯を炊き、月に5回は「おぼくさん」を取って仏壇にお供えします。たまにうっかり忘れていておばあちゃんに叱られます。これが、農家でもなく、 毎朝パン食の家庭だったら、仏壇にパンをお供えしてもいいのではないでしょうか。と思えるくらいに、日本人はパンも好きです。
その証拠に、パンの絵本もたくさんあります。古典的なところでは、『からすのパンやさん』。『どんくまさんのぱん』もおいしそうなパンの絵本だし、 そのオマージュともいえる『ノラネコぐんだんパンこうじょう』も面白い。パン作りの手順とお話を巧みに合成した『ぼくのぱんわたしのぱん』もいいです。 最近、『しょくぱんちゃん6しまい』という絵本も入ってきました。
今回の『パンのずかん』は、その名の通り、美味しそうな絵を見て楽しむだけでなく、知的好奇心もそそられて、それを十分堪能させてくれる絵本です。
104種類ものパンは、まず、丸いとか四角いとか細長いとか、見てわかる形で分類されます。丸いあんパンは日本生まれ。 四角で上がふくらんでいる山がたパンはイギリス生まれ。長―いバゲットはフランス生まれという具合。そう、パンにはそれぞれ出身国の国旗が表示されているのです。
ついで、生地を丸めるとか、重ねるとか、ひねるとか、加工の違いで分類。硬いか柔らかいか、白いか茶色いか、原料は何か、焼き方はどうか等々、 小さい子向きの絵本とは思えないくらいの中身の濃さです。
また、パンと他の食材を組み合わせるのにも、いろいろなやり方があります。サンドイッチはイギリス、ハンバーガーはアメリカ、 バイン・ミーというのはベトナムのサンドイッチです。具をパンの上に乗せたり、包み込んだりして食べるものもあります。 おまけに、作者オリジナルの愉快なパンのページも。
いかがでしょう。読んだらお腹いっぱいになるかしら。それともお腹が空いて、パンを食べたくなるかしら。食欲の秋におすすめです。
大森裕子 作 井上好文 監修 白泉社 950円 (2018年 ’平成30年’ 9月19日 249回 杉原由美子)