ヤママユ

 「ヤママユ」とは、マユをつくるガの一種です。マユを作る虫でもっとも有名なのはカイコです。私は、小学3年の時、教室でカイコの飼育をしました。学校の運動場の東側に10本ばかり植えてある桑の木から葉っぱを摘んできて、カイコに与えるのです。ムシャムシャとよく食べるので、与えるのが楽しみでした。今の小3生もやっているのでしょうか。
 室内で育てられるカイコに対して、ヤママユは、野外で葉っぱを食べてマユを作ります。そうと知らなければ葉っぱを食い荒らす、食いしん坊のはらぺこあおむしに過ぎません。でも、現代の虫めづる姫君、岩渕真理さんが、卵から羽化までをていねいに観察、記録してくださったおかげで、「ヤママユ」が貴重な絹糸の生産者であることがわかりました。
 卵から出たばかり、1齢の幼虫は体調3㍉ほど、それが4回脱皮すると9㌢ほどにもなり、自分で枝葉を選んでマユを作り始めます。マユの美しい薄緑色は、せっせと食べた葉っぱの色そのもの。マユから繰り出される糸も、同じく透き通るような美しい薄緑色なのです。
 この薄緑色のマユに惹かれた女性が、富山県にもいました。富山市八尾にある「富山県がうん天蚕の会」を主宰しておられる友咲貴代美さんです。友咲さんは、10年ほど前、ウォーキングの途中で拾った一個のヤママユに惹かれて、廃業寸前だったヤママユの生産林を引き継ぎ、植林と養蚕を続けてきました。今回の「ヤママユ」の絵本制作にあたっても、友咲さんから岩渕さんへマユが送られているのです。
 季節は今がちょうど、ヤママユがマユを作り始めているころ。マユの中でさなぎになって、2ヵ月くらいすると、マユを破って、成虫となったヤママユが飛び立ちます。ワイルドシルクとも呼ばれるだけあって、シルク製品の魅力ももちろんのこと、自然の中で育つ生きものの姿が頼もしく、清々しいです。

岩渕真理 作 福音館書店 440円  (2020年 ’令和2年’ 8月19日 270回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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