コレットのにげたインコ

 コレットは、知らない町に引っ越してきました。庭のある家なのに、親は「どうぶつは飼えません」と、問答無用の構え。むしゃくしゃして仏頂面のまま外に出たコレットは、近所の子どもたちと鉢合わせになります。
 「やあ。きみだあれ?ぼく、アルバート」「ぼくはトムだよ」「なにしてんの?」気さくに話しかけられて、思わず「わたし、コレット。ペットがいなくなったんで探しているの」とその場を取り繕います。
 「えっ、それはたいへん。ペットは犬?」「それとも猫?」と、初対面にもかかわらず真剣に心配してくれる2人に引っ込みがつかなくなったコレットは、「ええと、鳥だよ。インコ!」と、適当に答えてしまいます。
 親切な2人は、鳥だから望遠鏡を持っているリリィに聞いてみようとか、餌台を作っているスコットの家に行ってみようとか、そこらじゅうの友だちのところをたずねてまわります。コレットはそのたびに「インコの色は?」「名前は?」「なんて鳴くの?」「大きさは?」などなど、質問攻めに合い、次第にインコの存在感が増していきます。
 「ええと、大きさはね、だんだん大きくなって籠に入らなくなって家にも入らなくなって、私を乗せて飛ぶようになって…」
 とうとうあることないことをしゃべってしまい、集まった7人の友だちを呆然とさせてしまいます。あーあ… … 。
 作者のアルスノーさんの作品は、以前『ジェーンとキツネとわたし』をこの欄でご紹介しました。思春期にさしかかった少女が、小説『ジェーン・エア』の世界と現実生活を行き来しながら、気持ちの通う友だちを見つけるお話でした。
 今回はインコが、空想の産物でありながら子どもたちを結び付ける共通のアイドルの役割を果たしています。
 どちらの作品も、一旦は絶望のふちに立たされた主人公が、子どもたち同士の魂が自然に寄り添うという理想的なかたちで幸せをつかんでいます。そこに至るまでの、子どもたち一人ひとりの表情と動作がとても繊細に描かれています。どうか隅々までご覧ください。
 コレットの出会った友だちの一人を主人公にした続編があるそうで、翻訳が出るのを楽しみにしています。

イザベル・アルスノー 作 ふしみみさを 訳 偕成社 1,540円  (2021年 ’令和3年’ 3月17日 276回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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