サンタクロースの冬やすみ
前作『サンタクロースと小人たち』の邦訳が出たのは39年前の1982年、当プー横丁が開店した年でした。そして、今回『冬やすみ』編が発売になりました。
プレゼント配りのミッションをやり遂げたサンタクロースとその仲間たちは、13連休できるのです。
12月25日の朝、プレゼントの包みを開けることから始まって、めいめい好きなことをやっていいよ、という流れに。好きなことといえば、「遊ぶことと食べること」に尽きると思いますが、サンタさんと小人たちも同じです。
室内では本を読んだりボードゲームをしたり、いつもはおもちゃ倉庫になっている大きな建物では劇の上演やダンスをします。屋外ではスキーやそり遊び、雪だるま作りも欠かせません。遊び疲れてクタクタになったら、サウナでゆっくりしてごちそうをいただきます。
連休中の一日はバスで街に出て、ショッピングや映画鑑賞することに当てられます。最新情報の収集もサンタクロースには重要ですから。作者のマウリ・クンナスさんもとても勉強家らしくて、レトロな味わいのイラストの中に、ごく新しい本やおもちゃを描き込んでいます。伝統を守りながら進取の気質を併せ持つフィンランドのお国柄が現れていると思います。
そして私は今回初めて知ったのですが、サンタさんたちが住むという「コルバトントリ」という地名は決して荒唐無稽なフィクションではなく、ロシアとの国境付近に実在する山なのですね。「耳の山」という意味だそうです。
1927年にフィンランドのラジオ・パーソナリティーが「サンタはコルバトントリに住んでいて、とてもいい耳をしているので子どもたちの願いが全部聞こえている」と語ったことを、フィンランドの人びとは信じているのです。マウリさんの絵本のおかげで、より真実味が増したと思います。
想像力と創造力、どちらも大切にする国から、日本の子どもたちへのプレゼントの1冊です。
冬やすみに、どうぞ楽しんでください。
マウリ・クンナス 作 いながきみはる 訳 偕成社 1,980円 (2021年 ’令和3年’ 12月22日 285回 杉原由美子)