ねこのホレイショ
ねこのホレイショはもう子ねこでもないし、べたかわいがりされるよりは「そんけいをこめてあつかってほしい」と思っています。飼い主のケイシーさんはそこのところは承知していて、ホレイショをむやみになで回したりしないで、食事時には皿に上等なレバーを入れてくれます。ケイシーさんは生きものに親切な人なのです。
ある日、ケイシーさんは雨にぬれていた宿なしの子犬を家に入れて、パンとミルクをやりました。雨が止んでも、子犬は外に出されませんでした。またケイシーさんは、しばらく留守にするというご近所さんのウサギを預かりました。それから、翼の折れたハトの介抱も始めました。のびのびと居心地よさそうに過ごしている居候たちに囲まれて、「いったいここはだれの家なんだ」とホレイショは面白くありません。
そこへやってきたのが、となりに住むマイケルとベッツイ―の兄妹。動物が好きな2人には、ケイシーさんの家は絶好の遊び場なのです。子犬やウサギは喜んでいますが、ホレイショは「もううんざりだ」と、家を出てしまいます。
つい帰り損ねて路上で一晩過ごすことになったホレイショは、食べものを探し回っているうちに、2匹の子ねこを道連れにしていました。夜が明けて、家に帰ろうとするホレイショでしたが、さて、この子ねこたちはどうなるの?「だれか面倒みてくれないかなあ」と思った時、思い出したのは、そう、ケイシーさんです。
家に近づくと、マイケルとベッツイーが駆け寄ってくるではありませんか。
ホレイショも思わず走り出します。内心複雑なのですけどね。
表紙には、相当気難しそうなねこが描かれています。読んでいくと、ものを言わないはずのねこの気持ちが見事に言語化されていて、何度も笑いました。最終ページには、表紙とは違う表情のホレイショが描かれています。なんと言っているのかな、言葉をつけてみたいけど、下手なセリフを書き込んだらホレイショに怒られそう。「修行が足りんな」って。
エリナー・クライマー 作 ロバート・クァッケンブッシュ 絵 阿部公子 訳 こぐま社 1,100円
(2022年 ’令和4年’ 10月23日 294回 杉原由美子)