こまいぬぼしゅうちゅう
こまいぬ(狛犬)とは、神社の境内に2体1組で向き合っている石像です。たいてい一方が口を開けていて、一方が閉じています。この絵本でも、その違いを強調して、性格の違う2匹のこまいぬを登場させました。
口を開けているのは「あーあ」。閉じているのは「うんうん」。昼間はだまって座っているだけですが、夜になると声も出せるし、軽々とジャンプもして、神社の周りをパトロールする、という設定です。そう、こまいぬって、見かけは恐いから、適材適所ですよね。
さて、あーあとうんうんが守っている神社のお祭りの日、隣町の神社に賽銭どろぼうが発生したとの情報が入りました。
ここは腕の見せ所と、自慢の大声でまくし立てるあーあに嫌気がさして、むっすりだんまりのうんうんは家出してしまいます。
そこであーあの「こまいぬぼしゅう」が始まります。条件は「一、顔がこわい ニ、すばやく動く 三、勇気がある」。でも、応募してくるのはカメに、ネコに、おとなしい小イヌという結果で、全然募集条件を満たさないのでした。そこへ折よく現われたのが「顔が恐くてすばしっこい」男。
あーあは喜んでその男を採用したのでしたが……。
賽銭どろぼうなんて他所事(よそごと)だと思っていたのに、数日前、富山県西部で発生しました。取られたお金はなかったようですが、器物損壊の被害がありました。被害にあった神社の写真にはこまいぬ一対も写っていて、このいぬたちはおそらくどろぼうを目撃したと思われます。あーあみたいに大声で吠(ほ)えればよかったのに。
絵本では、あーあが一旦捕まえたにもかかわらず、うっかり取り逃がしてしまったどろぼうを、音もなくさっそうと現れたうんうんがしっかりと咥(くわ)えてハッピーな結末になるのでした。
尾崎コンビの絵本は、登場する生き物が「ちょっとこわい」のが特徴です。読んでみたら、「こわおもしろい」ということがわかりますので、どうぞ、手に取ってみてくださいね。
尾崎玄一郎・尾崎由紀奈 作絵 ひさかたチャイルド 1,430円(2023年 ’令和5年’ 12月24日 308回 杉原由美子)