スナ・フジタ図鑑
スナ・フジタは、2人組の陶芸家です。若い頃は大きな作品も作っていましたが、だんだんと、この本に収録されているような小さい作品、毎日使える食器や花瓶なども作るようになりました。
それはおそらく、お子さんが生まれたからだと思います。
初めてこの作品集を開いた時、「これは絵本だ」と感じました。土台が紙でなくお皿や湯呑みであるだけで、そこに描かれているのは生きていることを喜び、楽しんでいる小さな生きものたちだからです。
ふたもの「どうぶつマンション」という作品は、本体の容れ物をマンションに見立てて、ニワトリ、ウサギ、キリン、クマ、ペンギンなどが窓から顔を出している絵柄になっています。ふたものですから、対になるふたがあります。そのふたにちょこんとついているのつまみの部分に、このユニットさんの真価があります。一つには、アザラシと人間の子どもがトランプしている姿のつまみがついています。もう一つには、アザラシの子どもと人間の子どもがお風呂に浸かっている姿のつまみがついています。一つ一つに物語を語らせているのです。
動物と子どもの取り合わせにふさわしい背景として、公園や幼稚園、動物園、水族館が登場。日常生活では、銭湯やこたつや片付いていない子ども部屋も。一転して、大自然そのものである深海や冬山や宇宙もあり、です。まさに、絵本の世界です。
フジタさんの作品に込めた願いは「平和な世界を描く」ことで、それもまた絵本創作と共通しています。たくさんの作品のうちから320点に絞って、初めての作品集の刊行となりました。タイトルを「図鑑」としたのは、図鑑好きだったフジタさんの意向によるもの。「適度に分類されていて、バッタリ面白いものに出合える」からだそうです。合えました、たしかに。
藤田匠平・山野千里 制作 求龍堂 4,400円 (2024年 ’令和6年’ 7月28日 315回 杉原由美子)