なりすます むしたち

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 表紙の絵、アリさんとアリさんがごっつんこ、しているのではありません。左はアリ、右はアリグモなのです。 アリグモが前に突き出しているのは触覚ではなく、前足です。アリグモが、なんのためにアリに「なりすます」のかというと、 アリと仲良しのアブラムシを捕らえて食べるためです。アリに混じっていれば誤魔化せるのでは、と思いますが、アリは意外と強い生きもので、 見つかって集団で攻撃されると勝ち目がないのです。アリのいない間にアリに「なりすまし」て、アブラムシを油断させて捕食する、 というのがアリグモの生き方です。  この絵本には、ほかにも、虫たちのそっくりさんがたくさん登場します。「似ています」とただ並べているのではなく、ストーリーとして、 生活している様子を追っているので、あっと驚く発見の連続になります。  例えば、同じくアリに似ているクモの、アオオビハエトリは、仲間と見せかけておいて、果敢にアリを襲って食べてしまいます。 また、オナガグモは、松葉にそっくりな細長い緑色の体で敵の目をくらまして、近づいてきた虫を餌食にしてしまいます。 みんな、生きるために「なりすまし」をしているのです。  そのほか、鋭い針を持つハチに似た、黒と黄色の虫、毒をもつ蝶々に似た模様をした蝶々など、「なりすます」ことによって自分の身を護り、 かつ、食料を獲得していることがわかります。  それにしても、一昨年6月にこの欄でご紹介した舘野鴻さんの『つちはんみょう』でも思ったことですが、 虫たちが、生まれた瞬間から自分の生き残る方法をわかっているのは不思議です。その点人間は、平穏な国に生まれれば穏やかに生き、 戦火の中で生まれれば、子どもでも銃を手に持たされてしまいます。人間の、本来正しい生き方はいったいどういうものなのか、 ちゃんと答えられる大人になりたいと思います。

澤口たまみ 文 舘野鴻 絵 福音館書店 428円  (2018年 ’平成30年’ 11月21日 251回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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