ヒマラヤのふえ

 この絵本は、インドの高名な画家ラマチャンドランの作品です。
 ラモルは、ヒマラヤ山脈のふもとの岩だらけの土地をせっせと耕して、妻のブリンジャマティといっしょに、やっとのことで暮らしをたてていました。「こんなところ、もういやだ」とくじけそうになった時、どこからともなくやって来たおじいさんが、ひと晩の宿を求めました。
 2人は、乏しい中から食べられるものをみんな出しておじいさんにふるまい、休ませてやりました。あくる朝、おじいさんはお礼を言って、「なにかやくにたつかもしれません」と、ふえを一本くれて、立ち去っていきました。
 数日後、ラモルが、ふと思い出してふえを口に当てると、すばらしい音色が流れ出し、岩だらけだった地面から花や木の芽が伸びてきて、たちまちのうちに辺り一面が花畑に変わったのでした。
 ふえの音は天まで届き、星の三姉妹の心をとらえました。「もっと近くで聞きましょう。」フクロウに姿を変えて地上に降りた星たちは、ラモルの笛の音に縛られて、夜明け近くになっても空へ戻れそうにありません。焦った星たちは、とうとうラモルを一匹のマルハナバチに変えてしまいました。
 「ラモル、どこへいったの?」
 うろたえるブリンジャマティの前に、いつかのおじいさんが現れて、ラモルを取り戻す方法を教えます…。
                 ◇
 ラマチャンドランの絵は曼荼羅を連想させる神秘的な線描に極彩色が施されて、息をのむ美しさです。特に、ブリンジャマティがラモルを救出するときに鍵となるハスの花の姿は、印象的です。ふえの音は想像するしかありませんが、この絵本に描かれたハスの花は、一度見たら忘れられません。
 初版が1976年に出て、一旦品切れになっていました。お客さまから要望があって調べてみて、2003年に宮崎県の木城えほんの郷から再版されていたことが分かりました。あのハスの花の本がもう手に入らないのかと落胆していた私は、思いがけなく再会を果たすことができて、とてもうれしかったです。
 この世には、まだ魔法使いがいるみたいです。

A・ラマチャンドラン 作絵 きじまはじめ 訳 木城えほんの郷 1,650円  (2020年 ’令和2年’ 10月21日 272回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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