妖怪の森
お盆にお墓参り、というのは、日本人にとっては年齢性別貧富の差を問わない、まことに一般的な風習だと思っていましたが、最近は行かない人も増えてきたようで、結果として、お墓参りを「知らない」子どもが出現しています。 だから何で「妖怪」の本なのか、ちょっと苦しい説明ながら、ご先祖様を思うことと、妖怪たちと遊ぶことは、結構共通点があるような気がして、ご紹介します。お墓参りに行った人も行かなかった人もきっと楽しめます。
ご先祖様と妖怪は、ふつう、どちらも目には見えません。目に見えたら、さぞ怖いでしょう、でも、おもしろいことにもなるかもしれません。話を聞いたり、写真や絵を見て、想像しているうちに、本当にその人や妖怪の存在を信じられるようになってきます。会いたくなってきます。そして、想像の中では、しゃべったり、遊んだりすることもできます。
『妖怪の森』は、妖怪研究者の水木しげるさんが、子どもたちのために作った絵巻絵本です。 男の子と女の子が通り抜けて行く森や川や村に、170種類もの妖怪が登場する趣向になっています。
2人は、おどかされたり、助けられたり、遊んでもらったりしながら、その妖怪の森から、町へ帰って行きます。「ああ、おもしろかった」という顔をして。というのも、この絵本には、言葉は全くないのです。自分で見て、理解して、楽しむしかありません。
この本をずっとお姉ちゃんに解説してもらっていた末娘が、先日、1人でボソボソ読んでいます。あれ、せりふなんかないはずなのに、と聞き耳を立てていると、登場人物に名前まで付けている。その名前はというと、「しげるくん」と「みずきちゃん」なんだって。お見事!
水木しげる 作 こぐま社 2,427円 (2000年 ’平成12年’ 8月28日 39回 杉原由美子)