かぜはどこへいくの
子どもたちの夏休みもそろそろ終わろうとしています。 夏休みに限らず、「こんなに楽しい日がどうして終わってしまうんだろう」という気持ちになったことはありませんでしたか? 子どもなりの無常観を味わう瞬間です。
この本に出てくる男の子がそうでした。夏の夕暮れどき、「もう家に入りなさい」と言われて、しみじみと「きょうは楽しかったな。どうして終わってしまうんだろう」と考えます。お母さんは、「終わるのではなく、始まりなのよ」と教えます。
「昼の終わりは、夜の始まり。沈む太陽は、別の場所を照らしに行くの。かぜは止んでも、どこか遠くで木をゆらしてる。道がみえなくなったら、むこうでだれかが、 あそこから道が始まってるなと思うの」というように。命の連鎖にもさりげなく触れています。やわらかな鉛筆画の絵がまた、想像をかきたててくれます。
決して思慮深いとはいえない我が娘の日記には、毎日毎日「きょうはいい日でした」とか「すごく楽しかった」とか書いてある。なかみは、朝ごはんのメニューに始まり、おじいちゃんと墓掃除に行ったこと、お好み焼きを作ったこと、お風呂に入ったこと、など、なんでもないようなことばかり。母は、あなたの幸せが終わらないことを祈るばかりです。
ゾロトウ 作 ノッツ 絵 松岡享子 訳 偕成社 1,000円 (2001年 ’平成13年’ 8月20日 52回 杉原由美子)