もりのひなまつり
お人形は、夜になると動き出すといいますが、本当でしょうか?
そんなわけないって? でも「だれも見たことがない」としたら、わからないですよね。この絵本に出てくるおひなさまは、動いたも動いた、なんと家を出て森までいったのですよ。
というのも、森に住むこねずみたちのために、出張ひなまつりをやってくれたのです。 いつもひな壇の上でおすまししている人形たちは、外で歌ったり踊ったりしておおはしゃぎ。はっと気がつくと、髪はボサボサ、着物はほころび、顔は泥まみれと惨たんたる有り様になっていました。まあ、たいへん、このままでは肝心のひなまつりには飾ってもらえない、それどころか、捨てられてしまうかもしれません。 そんなおひなさまを救ってくれたのは……。
飾ってしまえばただ眺めているばかりのおひなさま。作者のこいでやすこさんは、この絵本で人形たちを思いっきり動かしてみせてくれました。本当に、おひなさまがひな壇を下りて来ていっしょに遊んでくれたら、どんなに楽しいでしょう。登場する人や動物の性格が、絵を見ていてわかってくるし、古典的な装束や道具が細やかに描き込まれて、遊び心満点の絵本です。
こいでやすこ 作・絵 福音館書店 800円 (2002年 ’平成14年’ 2月25日 58回 杉原由美子)