もこ もこもこ
お客さんはこの絵本が欲しいとき、「もこもこの本、ありますか?」と尋ねます。でも、正確には「もこ もこもこ」と言わなければなりません。「もこ」、一呼吸おいて「もこもこ」と続ける。これが正しい読み方なのです。理屈を言うには訳があります。
例えば、子どもと手遊びするとき、いきなり手や顔にさわると嫌がられるけど、「これからさわるぞー」って感じで徐々に手を近づけていくと、それだけで子どもは笑い出して一気に遊びモードに変換します。
それと同じように、まず「もこ」と言ってみて、つぎのページをめくりながら「もこもこ」と続けると、なにか確実に心の中で準備が整うのです。
その次は「にょき」です。アニメーションを思わせる鮮やかな色彩と、子どものつぶやきのようなことばがくり返されて、子どもの心の遊び場になっていきます。作者の谷川俊太郎さんは、そういう「ことばの魔力」を私たちに伝えてくれる人なんだと思います。
この絵本が、お子さんのことばの獲得に非常に役立ったと言われるお母さん、最近4冊目を購入されました。絵本は子どものペースに合わせて見ていけるのでいいとおっしゃいます。ただ、「もこ もこもこ」をパソコンの画面で表現できるものなら、ぜひ試してみたいそうです。
谷川俊太郎 作 元永定正 絵 文研出版 1,243円 (2002年 ’平成14年’ 5月27日 62回 杉原由美子)