セレスティーヌのおいたち

 20年間にわたって出版された「くまのアーネストおじさん」シリーズの最終巻です。
 アーネストは、掃除の仕事をしながら、幼いねずみの少女セレスティーヌを育てています。私が初めてこの2人に出会ったのは、「かえってきたおにんぎょう」という本でした。散歩の途中でお人形を失くしてしまったセレスティーヌのために、慣れない針仕事をするアーネストが描かれていました。
 20冊を数えるシリーズでは、楽しみにしていたピクニックに雨が降ってしまった、美術館で迷子になった、アーネストが病気になった、急なお客さまにまごつく2人などが描かれ、どの巻でも、無邪気なセレスティーヌと気の優しいアーネストが助け合ってささやかな幸せを守っています。
 ほのぼのとしたシリーズの中に「セレスティーヌ-アーネストとの出会い」という異色作があります。この作品には、アーネストがセレスティーヌを育てることになった由来が描かれています。セレスティーヌはなんと、ごみバケツの中に捨てられていたという悲しい出生の秘密があったのです。「セレスティーヌのおいたち」では、この事実をアーネストがセレスティーヌに告げることになります。
 ある日、いつもはお茶目で明るいセレスティーヌが、おずおずとアーネストにたずねます。
 「ねえ、わたし、どこでうまれたの?」
 アーネストは覚悟を決めて、セレスティーヌにそのおいたちのすべてを語って聞かせます。セレスティーヌはアーネストの愛情に応えて、すばらしい返事をしてくれます。まだ当分子育ての続く私には、それは、忘れてはならないことばに思えました。
 また、作者のバンサンは、二人の生みの親としての使命を果たしたかのように、この巻を遺作として亡くなりました。

ガブリエル・バンサン 作 もりひさし 訳 BL出版 1,300円  (2003年 ’平成15年’ 2月18日 71回 杉原由美子)

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セレスティーヌのおいたち” に対して1件のコメントがあります。

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