ガジュマルの木の下で
タイのチェンマイ市に「バーンロムサイ」という家があります。ガジュマルの木の下の家」という意味です。 新聞やテレビでも紹介されたのでご存知の方も多いかもしれません。この家には、日本人のお母さんと2歳から11歳までの26人のタイ人の子どもが暮らしています。
子どもたちの本当のお父さんやお母さんはHIV感染により亡くなったか、体が弱って子どもを育てきれなくなったのです。子どもたちも母子感染しているので、親戚やふつうの施設にいられなくなりここへ来ました。
この写真絵本では「バーンロムサイ」での子どもたちのようすがたいへん分かりやすく紹介されています。写真を撮った奥野さんには同じくらいの年の子どもがいます。そのせいか、どの子の写真も魅力いっぱいです。
8歳のスラチャイは絵を描くの大好き。日ごろはおとなしいけど、絵筆を握るとみるみるエネルギー満タン、美しい躍動的な作品を描きあげます。タイ舞踊が得意なアーム、食欲旺盛なタン、おてんばさんのテンモー、小さい子を優しく抱いている最年長のミルク……。一人一人に愛着がわいて来ます。
しかし、「このページのこの子がもう亡くなった」という現実もあります。なにしろ3年間で9人もの子が天に召されました。
母親である私には、読むのがつらい本でした。子どもを遺し、若くして亡くなった親たちはさぞ無念だったことでしょう。自分が母子感染していることを知らないガンニガの夢は「メー(お母さん)になること」なのです。ふっくらした頬のかわいらしい女の子です。ガンニガが、これからの人生を勇気と希望をもって乗り切ってくれるよう、祈りたいと思います。
名取美和 文 奥野安彦 写真 岩波書店 1,700円 (2003年 ’平成15年’ 3月3日 72回 杉原由美子)